2025年7月発行わんわん通信No44コラム
犬を「買う」こと
長年家族として過ごしてきた愛犬を看取った犬部のメンバーが、最近新たに仔犬を飼い始めました。飼い始めたとは聞いたけれど、その後の自慢の話がちっともありません。「かわいい仔犬ちゃんの写真を見せてよ!」とせがんだところ、可愛い写真と共に「預かりをするとか保護犬を引き取るとか、そういう選択ができずごめんなさい。」というメッセージが届きました。きっとそんな思いがあったから、犬自慢を躊躇していたのでしょう。
この「犬を買う」ことに対する後ろめたさ…。保護活動をする人たちからよく耳にします。
確かにペットショップやブリーダーは、そこにお金を払って買う人がいるから成り立っています。買い手のニーズを満たすために犬に犠牲を強いて金儲けをする悪徳ショップや悪徳ブリーダーでも、そこから買う人がいれば成り立ってしまうのは事実です。それはペット産業の問題として規制し、悪徳業者を見極める目を社会が鍛えていかなくてはならないと思います。
でも、個々の犬飼いさんについて言えば、どこから手に入れようが、高額だろうが、保護犬だろうが、大切なことは“終生きちんとお世話をして、愛して、天寿を全うさせてあげること”ではないでしょうか。
犬と共に暮らす喜びや苦労は、その犬の出どころや金額に関わらす、同じように飼い主にふりかかってきます。保護活動をする立場として願うのは、全ての飼い主が犬との生活を楽しみ全うすることです。それができない状況の人や、する覚悟のない人は、犬を飼わないようにする仕組みです。
それは、私たちボランティアも例外ではありません。保護活動をしているからと言って「かわいい仔犬の時期から飼いたい」とか「好きな犬種を飼いたい」と思うことを封じ込めるのは、むしろ保護活動が犬とのハッピーライフを妨げる足かせになってしまうのではないかと私は思います。
犬部のメンバーでも、半数近い人は現状自分の犬を飼っていません。これまで飼ったことがない人もいれば、看取った後再度飼う状況にないと判断している人、預かりに徹しようと思っている人・・・とさまざまです。
犬を飼っていなくても、お店で買った犬を飼っていても、自分以外の犬と人間が幸せな生活を送ることを願って、自分にできることをしようという人たちが、保護活動ボランティアです。ボランティアをする上で私が一番大切だと思っているのは、個々のメンバーが「自分にできること」を自分で決めて、その「できること」に責任と誇りを持つことです。ボランティアのために無理をして自分の生活を壊すことは、責任を持つことにはなりません。自分は何がどこまでできるのか、何ができないのか。それは他からの要求ではなく自分で線引きすること。そして決めたら責任をもってできることをし、それを他の人と比べて卑下したり、他の人も同じようにやることを要求したりしないこと。これまでの犬部の活動の中で、それがどれほど大切で難しいかを実感し、そのことをメンバーにも伝え続けてきました。今、それぞれのできることを責任持ってやってくれる犬部ができあがってきていると思いますが、それでもまだ残っている、「預かりができない」ことや「犬を買う」ことを引け目に思う気持ち…。遠からず、できることをしている誇りをもって話ができる犬部であり、保護活動でありたいと願っています。