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​2023年7月発行わんわん通信No39コラム

​殺処分ゼロの裏側

 R3 年度の静岡県の犬の殺処分は3頭。そしてR4 年度は1頭で、犬についてはずっと願ってきた殺処分ゼロはほぼ達成されています。その状況の中でR7 年に富士市に新たにできる愛護センターでは、これまでのように、収容期限がきたらボランティアに譲渡するのではなく、センターが主体となって譲渡までもっていく体制が整っていくことを期待しています。

 

 この数年、殺処分ゼロがほぼ達成されたことを喜びつつも、一方で犬部の預かり犬がどんどん高齢化し、咬む犬も増え、譲渡会を開催してもなかなか譲渡につながらない現状であることが、大きな課題でもありました。そんな中、いつもご協力いただいている獣医さんから「アニマルレスキューシステム基金」が発行する冊子をいただきました。そこにはペットに関する独自調査の報告と共に、全国のボランティアが「殺処分ゼロ」を強く求めてきたことによって起こる問題について書かれていました。

 ひとつは、保健所での殺処分をゼロにするという数字にこだわることで、譲渡できないような犬が、保健所からボランティアに移っただけで、そこから譲渡できずに長くとどまっているという状況が起きること。

犬部もこれまで保健所で譲渡不適の烙印を押された犬も、犬部として引き受けられると判断すれば、とにかく殺処分しないでほしいと保健所とかけあい続け、保健所が折れての引き取りもたくさんありました。結果全く問題が起こらなかった犬もたくさんいますが、攻撃性がおさまらず譲渡ができないままの犬や、譲渡できずに犬部で看取る犬もいました。確かに譲渡不適犬を保健所からボランティアに移すことで達成された殺処分ゼロ、という側面はあるでしょう。

 ただ、犬部だけでなくいくつものボランティア団体が掛け合い請け負ってきた結果、静岡県の殺処分施設がなくなるということは、大きな進歩であり、ここからが大切だと思います。ゼロという数字にこだわって、今まで通りボランティア主体で引き取るのではなく、新しいセンターを中心に行政が譲渡や安楽死の判断を担えるような、協力とチェックをしていきたいと思います。

 そして殺処分ゼロのもうひとつの影として、行政の殺処分数をはねあげる「野犬」について、殺処分反対の強い要求に対して行政が譲渡のための審査を放棄し、全国にルーズに譲渡されて、そこから逸走してしまったり、扱いきれずに再譲渡されたりしていることが挙げられていました。静岡県は野犬はほとんど保護されませんが、全国的に有名な山口県の周南市の野犬を引き取っている個人、団体は珍しくありません。そして特に「個人」については、野犬を扱う知識も経験もない人が遠方の保健所から直接引き取り、ほとんどチェックもフォローもないまま、逃がしてしまったり扱えない状態になっているケースを、実際に見聞きします。犬の不妊手術も進んできている現在、可愛い仔犬を入手するには、ペットショップやプリーダーで高額な仔犬を買うしかありません。野犬の仔犬は、仔犬を欲しい人や仔犬を譲渡したいボランティアにとって貴重な新しいルートとなっているのも事実のようです。

 殺処分ゼロの数字のために、不幸な譲渡もうまれていることを認識しつつ、犬部は保護・譲渡を目的とした活動から、今いる犬たちが飼い主の元で天寿を全うできることを目的とした活動へのシフトチェンジを模索しています。

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