2018年7月発行わんわん通信No25コラム
平成29年度 静岡県犬の引き取り統計結果
〜「殺処分ゼロ」という数字の意味〜
私たちの東部地区も、やっと生存率が90%代になり、殺処分数1桁が近づいてきたのは、とてもうれしいことです。多くの人々の力でやっとここまできた、という思いがこみ上げてきます。
が、毎年疑問が解消されない、県の迷い犬情報に掲載される犬の数とこの統計結果の大きな差は、今回も同様です。県の迷い犬情報に掲載された犬で、東部地区から浜松送りになった犬はゼロ。保健所で亡くなった犬が3頭だったのに、統計上は13頭です。全頭欠かさず保健所に問い合わせているのに、この10頭の差はいったいどこからどううまれてくるのか。どうしても理解ができず、毎年がっかりする数字です。
そして、今回初めての試みとして、殺処分理由の内訳数字が出されました。
県全域の殺処分数30頭のうち、静岡市・浜松市を除く保健所管轄の殺処分は22頭。その内訳は、
① 譲渡不適(病気・攻撃性等)13頭
② ①以外の殺処分3頭
③ 引き取り後の死亡6頭
でした。保健所で亡くなる犬が、殺処分にカウントされるのはおかしいと常々思っていたので、この分類は必要なことだと歓迎したのですが、同時に今年の5月に環境省が発表した内容を見てビックリ!!“譲渡に適さない犬や保護中に死んだ犬も殺処分にカウントすると、殺処分ゼロを達成できない。譲渡が難しい個体の殺処分はやむを得ないとの考えで、譲渡困難な犬猫を除いた集計を本格的に実施することにした”というのです。
殺処分ゼロという数字を出すために、譲渡に向かない犬は、殺処分しても殺処分とカウントしないということです。殺された命として、生きていた命として、カウントすらされずに消えていくということです。これはあまりにも本末転倒。数字のために現実をねじ曲げるということで、今回の殺処分理由の内訳もそのための分類なのかと思うと、恐ろしい気がします。
「殺処分ゼロ」ということばが現実を離れてひとり歩きしないように、一頭一頭の命と向き合い、悩み、駆けずり回っている私たちは、そこに確かに生きている犬の声を伝えていかなくてはいけないと、改めて感じています。