2018年11月発行わんわん通信No26コラム
老犬を保護するということ
現在犬部で家族募集中の犬は全部で9頭。全頭中型以上の雑種で、そのうちの4頭は推定年齢10歳以上です。実はこれは、新しい家族に譲渡をするのにはかなり厳しい状況で、譲渡会を開いても1頭も声がかからないことも珍しくありません。
犬を飼いたい、と譲渡会に来てくださる方や問い合わせをくださる方たちは、「仔犬」「小型犬」「特定の犬種(トイプードル・柴・ミニチュアダックス等)」の3つの希望を出されることが大変に多いです。そういう意味では犬部にいる犬たちは、ことごとく条件からはずれて、三重苦を背負っているようなもの。譲渡に時間がかかるのも残念ながらいたしかたないことかもしれません。
特に犬の年齢。この際仔犬希望の人は問題外としても、10歳以上の犬を家族に迎えてくれる人は滅多にみつかりません。確かにせっかく家族に迎えても、5年足らずでお別れをしなくてはならないと思えば、もう少し長く一緒にいられる犬を…と思うのは普通の感覚でしょう。ボランティア側としても、キャパシティの問題として、1頭譲渡されなければ次の1頭を助けられないとなると、老犬を預かるということはその間保健所の犬を助けることができなくなることでもあります。いやな言い方をすれば、効率が悪いということです。
それでも、殺処分の危険にさらすということについて、若い元気な犬よりも、老犬に対しての方がより人間としての罪悪感を感じるのは私だけではないと思います。推定12歳、13歳で保健所に収容される老犬たち。川や側溝に落ちて上がれなくなっていたり、目が見えなくて車道にうずくまっていたり、民家に入り込んで動かなかったり…。どの犬も野犬などではなく、これまで12年、13年という年月を人間に飼われてきた犬です。ここまで人間に飼われ、共に暮らしてきて、最後の最後に見捨てられ、冷たい保健所で、ガスに苦しんで殺される。それは同じ人間として、犬に対して謝っても謝り切れない罪です。
自分を見殺しにした「人間」である私たちに尻尾を振り、からだをすりつけて甘え、かつて教わっただろうお手やおすわりを披露する老犬。そして、ごく少数ではあるけれど、残り少ない犬生を家族として一緒に過ごしたい、と老犬の里親になってくれる人たちがいます。
犬を飼ったら最後まで責任を持って守るということの啓蒙を続けると共に、この犬たちの最後を暖かく送り出してやることは、譲渡の効率には代えがたい、人間のだいじな責任だと思えてなりません。