top of page

​2016年7月発行わんわん通信No19コラム

終生飼育って何だろう?

 犬部のようなボランティアが活動に追われるのは、保健所に収容されてくる犬が後を絶たないからです。

 保健所に収容されて、飼い主が迎えに来てくれない犬が後を絶たないのは、犬の終生飼育がなされていないからです。

 行政もボランティアも犬の終生飼育を訴えますし、犬部から犬を譲渡する際の譲渡誓約書にも、終生愛情をもって飼育することをうたっています。一人暮らしの方や高齢の方には万一その方が飼育困難になった時に責任を持ってくださる方に、一緒に誓約していただきます。

 最近犬部の中で、この「万ー」の時に飼い主さんに何を求めるのかを議論することがありました。親が犬を迎えるにあたって、一緒に誓約書にサインをしてくれた息子さん。親が急に半身麻痺になって飼育ができなくなってしまった時、息子さんが必ず飼うことを約束するのが終生飼育なのでしょうか。

同様に、高齢でなくても、一人暮らしでなくても、何かの事情でどうしても飼えなくなることが絶対にないとは誰にも言えません。例えば東北や熊本のような災害で、犬と暮らせる家を持てなくなる可能性は私にもあります。私と夫が同時に事故で死んでしまう可能性だってゼロではありません。その時に、それぞれ薄給でアパート暮らしをしている息子や娘がうちの犬を引き取れるかと言うと、基本的には無理でしょう。

ではどうするか。仕事を変えたり、引っ越しをしたり、借金をしたりして、何とか身内が引き取るようにするか、残りの犬生を大切に飼ってくれる貰い手をみつけて託すか、お金を払って終生飼養のホームに預けるか・・・。

そしてその犬が保護犬の場合、もう一つ、保護元に返すという選択肢があがってきます。

 終生飼育とは、万が一自分が飼えなくなった時のことまで考えて準備しておくこと。保証人として一緒に誓約をするということは、自分が飼うことができなくても、責任をもってその犬の幸せな居場所をみつけることを保証するということだと考えます。「その犬の幸せな居場所」として保護元に返すというのは、確かに確実かもしれません。でもとても安易な選択でもあります。返すところがあるということは、終生飼育の覚悟をもって引き取ったとは言えないのではないでしょうか。一度譲渡された犬の出戻りをどうするか。

 どこのボランティアでも悩ましい問題ではないかと思います。一切引き取らないボランティアもありますし、必ず引き取るボランティアもあります。引き取りの料金を設定して引き取るところもあります。犬部はと言うと、基本的に一軒に一頭ずつの預かりで活動しているので、引き取って受け入れる先が空いていることは滅多になくて、ほとんど引き取れないというのが現状です。ではその犬が、犬部から見てきちんと飼ってくれそうもない先に譲られても、高齢で貰い手がないからと安楽死の選択をされても、その決断も含めて終生飼育なのでしょうか。万が一飼い続けるのが困難になった場合、私たちボランティアは犬の幸せのために何を求めるのか。譲渡の際の誓約書に、万が一飼い続けることが困難になった場合の記載を加えるために、終生飼育ってどういうことなのかを、私たちももう一度真剣に考えなおしています。

 犬だけでなく生き物を飼っている皆さんも、今一度終生飼育について考えてみてください自分にもしものことがあった時、自分にかかっている命をどうするのかそれを一緒に真剣に考えてくれる人をぜひ、身近に確保しておいてください。私たちの生活を豊かに潤わせてくれた命を最後まで守るために。

bottom of page