2016年12月発行わんわん通信No20コラム
犬との約束
6月6日に里親さんのおうちから逃げてしまった犬部の保護犬すみちゃんが、5ヶ月ぶりの11月3日に無事に保護されました。この5ヶ月間、様々な方にご協力いただきましたが、賛助会員の皆様にもネットで拡散していただいたり、ポスターを貼っていただいたり、心配と励ましのことばを頂いたり・・・とたくさんのご協力をいただきました。ブログでは報告させていただきましたが、この紙面を借りて改めてお礼を申し上げます。5ヶ月もたって無事に生きて帰れたこと、奇跡のようです。本当にありがとうございました。
目撃情報をたどってみれば、5ヶ月間ほとんど里親さん宅から1キロ圏内、お散歩コースの範囲にいながら、家に帰らなかったすみちゃん。パニックになって帰れないんじゃないか、野生にかえって人間を見たら逃げるモードになってしまっているんじゃないか、と思ってきましたが、いや意外に自由な放浪生活を謳歌していたのかもしれません。
捜索中に他のボランティア団体の人たちにも色々アドバイスをいただきました。捜索に行き詰ってどこをどう探せばいいのか途方にくれた時、唯一の希望になっていたのは、逃げて4ヶ月後に捕獲できたという保護犬K君のエピソードでした。K君はすみちゃんと違ってかなりの広範囲を移動して、最終的にはお人よしの外犬の餌を食べに通っていて、そこで捕獲されました。アドバイスをくださったK君の預かりさんによると、保護した時に何と1.5Kg太っていて、寄生虫もおらずフィラリアにも感染していなかったそうです。人間は心配で心配で夜も眠れずどんなにひもじいだろうと涙をこぼしながら捜索をしているけれど、K君はK君なりに放浪生活を楽しんでいたようで、保護活動そのものを考えさせられてしまった・・・と言っていました。
私も今回、「人間が人間の管理下で犬を飼う」ということについて、色々と考えさせられました。保護団体は犬部に限らず、人間が責任ある管理をしないがために保健所収容になった犬たちを保護しているので、譲渡の際には「安全に管理する」ということが最優先の条件になります。が、安全のための管理についてしばしば聞かれるのが「かわいそう」という声です。「首輪を2本もするのはかわいそう」「緩めじゃないと苦しそうでかわいそう」「なるべくつながずにフリーにしてあげないとかわいそう」「自由を謳歌しているのに無理やり連れ戻してつなぐのはかわいそう」・・・。
でも、これが子どもだったらどうでしょう。チャイルドシートを嫌がる子を無理にでも座らせるのはかわいそうでしょうか。道路に飛び出て公園に行きたい子の手をしっかりつかんで離さないのはかわいそうでしょうか。暗くなっても遊んでいたい子に門限を定めてるのはかわいそうでしょうか。保護者として命の安全を守るということは、何より優先されることではないでしょうか。
「犬を飼う」ということは人間が決めた、ある意味人間の勝手です。犬は望んでいるかどうかわかりません。
でも「飼う」と決めた以上、犬が望んでも望まなくても保護者として安全に守るのが責任です。天寿を全うして息を引き取るのを看取ってあげなくてはなりません。どんなに犬が自由でも、その結果車に轢かれたり、野生動物に傷つけられたり、わなにかかったり、餓死したり、または畑を荒らしたり、人を咬んだりすることから、人間の責任で守らなければなりません。そのためには、人間も体を張って時には犬を押さえつけ、時に、世間に頭を下げる、強い愛情が必要です。
私たちにたくさんの癒しと喜びとパワーをくれる犬たちに対して、「命を守る」ということは人間の側の大事な約束ではないでしょうか。
すみちゃん、お帰り。この先天寿を全うする時まで、私たち人間はあなたを守ると約束するよ。